ミニ別荘に出没するアシダカグモ

ashidakagumo

ミニ別荘はもともと定住を予定しておらず、簡素なつくりになっていることがほとんどです。それでもトイレや風呂場、キッチンなどの生活に必要な最低限の設備は付いていますので、その気になれば定住も可能というところは、観光地のキャンプ場にありがちなバンガローやキャビンなどとは大きく異なります。
このように中途半端な環境の良さが災いしてか、ミニ別荘では日本最大クラスともいえるアシダカグモが大量発生することがあります。不快害虫とも益虫ともつかないアシダカグモとの付き合い方を考えるのも、ミニ別荘暮らしでは必要になってくることといえます。

広告

アシダカグモの生態とは

アシダカグモは全長が2センチほどにもなる大型のクモですが、脚の長さまでを含めた全長としては10センチを超えることもあります。クモには大きく分ければ室内外に巣を張って生活をするものと、獲物を求めて常に走り回るものの両方のタイプがありますが、アシダカグモは後者の徘徊性にあたり、この種類のクモとしては本州では最大級といえます。

アシダカグモは肉食性で、ゴキブリやハエなどを好んで捕食することで知られていますので、益虫としての側面があることは確かです。ネット上ではよく「軍曹」などといった愛称で親しまれることもあります。昆虫学者・安富和男の著書『ゴキブリ3億年のひみつ』によれば、アシダカグモが2・3匹いる家ではゴキブリは半年で全滅するともいわれていますが、少なくとも俊敏で知られるゴキブリよりも足が早く、いくらでも捕まえてもらえるので、その姿さえ気にならなければ放置していても問題はないといえます。

グロテスクな見た目に辟易することも

そうはいってもやはりアシダカグモの見た目の不快感は相当なものといえます。全体的に茶褐色で、場合によっては縞模様が入っていますが、ともかくも手のひらサイズほどもある大型の虫が人間が生活している空間にいるだけでもショッキングなものです。虫が嫌いな人であれば、とたんに殺虫スプレーでも吹きかけて駆除したいという欲求に駆られるのは普通といえます。

もちろんそんなことでやすやすと退治されてしまうほどアシダカグモのような野生の生き物はひ弱ではありません。人間が近づく物音、というよりも振動を感知すると、一瞬動きを止めてじっと身構えますが、次に何かのアクションが起これば一目散に逃げてしまいます。ゴキブリ以上の俊足ですので、気づけばタンスの裏や戸棚の下などの物陰に隠れてしまい、もはやスプレーをかけるどころではありません。

そうかと思えば夜行性ですので、夜になるとこれまで隠れていた場所から姿をあらわし、いきなりトイレや居室の壁などにへばりついていたり、あるいはエサを求めてゴミ箱の周囲などをのっしりと歩いていたりもします。予期しない場所でアシダカグモに遭遇すれば、誰でもびっくりすることは間違いありません。

毒グモではなく臆病なので共存は可能

アシダカグモは外見がグロテスクなので誤解されがちですが、タランチュラのような人間に対しての毒性をもつクモではありません。またゴキブリのように人間の食べ物の上を我が物顔で歩きまわり、サルモネラ菌や大腸菌などのさまざま雑菌の運び屋となることもありません。
アシダカグモの消化液には強力な殺菌作用があり、常に脚をこの消化液できれいにする習性もありますし、もとより人間の食べ物そのものではなく、ゴキブリなどの動く虫を主食としているわけですので、根本的にゴキブリのような害虫とはいっしょに考えないほうがよいといえます。

また性格的に臆病で、日中は物陰に潜んで姿を見せず、夜も人間に見つかれば物音で逃げていってしまいますので、特に人間を噛んだり病気にしたりといった悪さを働くわけでもありません。

このようなことから、もしもゴキブリの出没に悩んでいて、しかもアシダカグモが家にいることを容認できるというのであれば、そのまま放置して自然にまかせるのもひとつの方法といえるでしょう。

なお、アシダカグモは室内にゴキブリがいなくなれば、またエサを求めてどこかに消え去ってしまうといわれていますが、残念ながら人間が生活する限り、ミニ別荘にゴキブリが絶えることはほとんどなく、したがって軍曹ことアシダカグモがどこか別の任地に向かうこともないようです。もちろん室内を清潔にしていればそのうち姿を見かけなくなるのでしょうが、実感としてミニ別荘暮らしを続けるほど、アシダカグモの数も増えているように思われます。