NHKの解約方法について

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「テレビを持っている人はNHKの受信契約をしなければならない」というのは、国の法律である放送法のなかに「協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない」と規定されていることが理由です。逆にいえば、テレビを捨てるなどしてその義務がなくなれば、NHKとの受信契約は解約できるということになります。

ところが受信契約の解約について、NHKではほとんどアナウンスしておらず、いざ解約しようと思っても手続きのしかたがわからないことが多いのが実態です。
そこでこのページでは、NHK受信契約の解約方法や注意したい点などについてまとめています。

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ネットに記載がないNHKの解約手続き

NHKの公式ホームページ(NHKオンライン)の右上に「受信料」のボタンがあります。ここをクリックすると「受信料の窓口」(インターネット営業センター)のサブページに移動することができます。

新規のNHK受信契約をする場合には、ここにある「新規契約」のコーナーからインターネットを通じてオンライン手続きができるようになっていて便利なのですが、受信契約の解約については目立った記述がほとんどありません。
いろいろなページを閲覧してようやくたどり着くのが、おそらくは「NHK放送受信契約・放送受信料についてのご案内」とタイトルがあるページです。

このページは解約手続きそのものについて書かれているというよりも、自己都合では解約ができないといった警告文のようなものですが、わずかに

  • 「テレビを設置した住居に誰も居住しなくなる場合や、廃棄、故障などにより、放送受信契約の対象となるテレビがすべてなくなった場合」のみ解約ができること
  • 受信契約の解約にあたって所定の「届出書」の提出が必要なこと
  • 「届出書」の記入内容をNHKが確認の上で受信契約を解約できること
  • 届けのあった前月まで、放送受信料の支払いが必要なこと

が書かれています。

つまり、新規加入の場合はオンラインで手続きができるのに、解約の場合は意図的にオンラインでの手続きは認めず、あくまでも「届出書」とよばれている書面を提出することが条件というわけです。

どうして受信契約が義務になるのか

受信契約の解約にあたって、まずはどうして受信契約を締結する義務があるのかについても知っておいたほうがよいでしょう。解約理由があいまいな場合には、逆に契約解除を拒否されてしまうことにもなりかねません。

まずは「放送法」とよばれる国の法律があります。ここには

 (受信契約及び受信料)
第六十四条 協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない。ただし、放送の受信を目的としない受信設備又はラジオ放送(音声その他の音響を送る放送であつて、テレビジョン放送及び多重放送に該当しないものをいう。第百二十六条第一項において同じ。)若しくは多重放送に限り受信することのできる受信設備のみを設置した者については、この限りでない。

と規定されています。この場合の「協会」というのは「日本放送協会」、すなわちNHKのことを指します。

つまり、テレビを設置したら受信契約を結ばなければならないというのは、国の法律に定められた視聴者の義務ということになります。
「受信設備」にどこまでの範囲が含まれるのかは法律そのものに明確な規定がありませんが、NHK側の解釈では、NHKの放送を受信できるテレビのことで、そこにはテレビチューナー内蔵パソコン、ワンセグ対応端末(ワンセグチューナーが付いたガラケー、スマホなど)を所持している場合や、アンテナがなくてもケーブルテレビを通してNHKの放送が受信できる場合を含むとしています。

テレビにガラケーが含まれるというのは常識外れということで、訴訟になったケースがいくつかありますが、最高裁で上告が棄却されていますので、高裁レベルまでの判決が確定しています。
たとえば、裁判所のポータルサイトでは、平成30年3月22日の東京高等裁判所の判例(事件番号:平成29(ネ)4375)を閲覧することができくますが、そこには

  • 受信設備の「設置」というのは「使用可能な状態におくこと」の意味であって、テレビを室内に据え置くことだけを意味しておらず、ワンセグ携帯も含まれる
  • 受信契約の強制はあくまで民事上のものであるので、受信料は税金の一種とはいえない
  • 携帯端末の受信能力が低いことと受信料の支払い義務の間には何の関係もない
  • ワンセグ携帯を持っているのに自分の意思でNHK放送を視聴しないというだけでは、法律にいう「放送の受信を目的としない受信設備」にはあたらない

のような趣旨が示されています。

具体的なNHK解約方法とは

実際にNHKを解約する方法ですが、まずは解約届の書類がなければ手続きができませんので、「NHKふれあいセンター」とよばれるコールセンターに電話をします。
ふれあいセンターの電話番号は0570-077-077となっており、年末年始以外であれば土曜・日曜・祝日でも受け付けていますが、営業時間は午前9時から午後8時までの間です。時間帯によってはなかなか電話がつながらない場合がありますが、そのまま待っていれば、ガイダンス付きの保留音が流れたあとでオペレーターが電話口に出ます。
なお、間違い防止を名目にこのコールセンターでは電話の内容をすべて録音しています。電話以外のメールなどでの問い合わせもいっさい受け付けていません。

できれば受信料の口座振替の領収証などに書かれている「お客様番号」がわかればスムーズですが(番号がなくても手続きはできます)、ここで解約をしたい理由と、解約手続き関連の書類を送ってほしい旨をオペレーターに伝えます。

その際、テレビを捨てたのであれば引取業者からの受付印が押された「家電リサイクル券」の半券(リサイクル証明書)があるかどうかや、ふたたびテレビを購入するかどうかなどの、いくつか聞かれることがありますので、「受信設備」にあたるテレビを再度設置する予定はないことを明確に伝えてください。
すでに述べたとおり、ワンセグ携帯やチューナー付きパソコンを別に持っていると答えた場合には、契約解除の理由にはなりませんので注意してください。

自宅に契約解除の書類(「放送受信契約解約届」)が届いたら、これに必要事項を記入してNHK営業センターなどに送り返すことにより手続きは完了(届出があった日に解約の扱い)します。
この書類には、住所・氏名・電話番号などのほか、テレビの台数、放送受信契約を必要としなくなった事由(何月何日にテレビを廃棄した、など)や、内容に相異ない旨の署名捺印をする欄があります。

なお、廃止届を出したあとで受信料の返金が必要になることがあります。
銀行口座からの自動引き落としの場合には、同じ口座に返金すればよいため特に別途の手続きは必要ないはずですが、口座振替以外の方法、たとえばクレジットカード払いやコンビニ・郵便局からの振込、スマホ決済の場合は、返金先の口座番号や口座名義などをあわせて記載しておきます。

単純な引っ越しなどは解約にあたらない

テレビを廃棄するのではなく、引っ越しをして以前の住所から新しい住所にテレビを移すだけであれば、これは契約解除の理由にはなりませんので、単なる住所変更の手続きとなります。
住所変更の手続きですが、NHKふれあいセンターに電話する以外にも、NHKオンラインからインターネットを通じて行う方法があります。
いずれにしても、手続き自体は簡単で、新住所や転居(転出)予定日、連絡先の電話番号、お客様番号などをNHK側に伝えるだけですが、当然契約解除ではないので、引き続き受信料の支払いが必要となります。
なお、住所変更の手続きにあわせて、受信料の支払い方法を変更することは可能で、たとえば口座振替からクレジットカード払いに切り替えたり、2か月払いをより割引率の高い12か月払いにしたりといったことができます。

そのほか、同じ引っ越しでも「世帯同居の手続き」とよばれるものがあります。
これはたとえば学生や高齢者で一人暮らし世帯だった人が家族と同居するようになった場合や、仕事上の必要性から単身赴任をしていたサラリーマンが転勤を終えて自宅に戻った場合などが挙げられます。
NHKの放送受信契約は世帯ごととなっていますので、これまで契約のカウント上は2世帯だったものを解消して一本化する手続きと考えればわかりやすいはずです。
なお、一本化後の世帯のほうがこれまで受信料を払っていなかった場合には、住所変更の手続きと同様になり、やはり受信料を支払わなければなりません。

解約届に嘘を記入したらどうなるか

NHKの放送受信契約を解約するにあたり、たとえば実際にはテレビがあるのに処分したことにした場合など、嘘を記入した場合のペナルティは当然考えなければならない問題です。
テレビを持っているだけで一方的に契約を結ばされる現状は理不尽だと思う人は世の中に少なくないはずですが、少なくとも「放送法」という法律を盾にしているNHKのほうが、法的には強い存在であることは認識したほうがよいでしょう。

たとえば「日本放送協会放送受信規約」のなかには次のような条文があります。

 (放送受信契約の解約)
第9条 放送受信契約者が受信機を廃止すること等により、放送受信契約を要しないこととなったときは、直ちに、次の事項を放送局に届け出なければならない。
 (1) 放送受信契約者の氏名および住所
 (2) 放送受信契約を要しないこととなる受信機の数
 (3) 受信機を住所以外の場所に設置していた場合はその場所
 (4) 放送受信契約を要しないこととなった事由
2 NHKにおいて前項各号に掲げる事項に該当する事実を確認できたときは、放送受信契約は、前項の届け出があった日に解約されたものとする。ただし、放送受信契約者が非常災害により前項の届け出をすることができなかったものと認めるときは、当該非常災害の発生の日に解約されたものとすることがある。
3 NHKは、第1項の届け出の内容に虚偽があることが判明した場合、届け出時に遡り、放送受信契約は解約されないものとすることができる

要するに、NHKと受信契約者との間の約束事である規約のなかでは、虚偽申告があればNHKが一方的に解約を認めないこともできるというわけです。

それだけで済めばよいのですが、最近では受信料の支払い拒否をめぐってNHKが受信者を裁判に訴え、被告側が敗訴している事例もありますので、裁判沙汰の末に多額の請求があることも覚悟しなければなりません。

障害者や生活保護の場合は受信料免除という手段もある

受信料を支払いたくないというだけで、テレビ自体は見たいということであれば、解約とは別に、受信料の減免という手段を使うこともできます。
これは次のような一定の免除基準(表は主なものでそのほかにも災害の際の減免などがあります。)に該当することが条件ですが、もしも該当する場合には速やかに手続きをしておくのが得策です。

NHK受信料の全額免除

  • 生活保護を受けている場合
  • 障害者手帳を持っている人がいる世帯で、しかも世帯全員が市町村民税非課税の場合
  • 親元を離れて暮らしている学生で、奨学金や授業料免除を受けている場合

NHK受信料の半額免除

  • 視覚障害または聴覚障害の身体障害者手帳を持っている人が世帯主かつ受信契約者の場合
  • (身体・知的・精神)障害者手帳を持っている重度の障害者が世帯主で受信契約者の場合

手続きには公的な証明が必要であり、たとえば身体障害者が受信料免除の申請をするのであれば、市町村の福祉事務所や福祉課に出向いて、「放送受信料免除申請書」に必要事項を記入し、役所で証明印を押捺してもらう手続きがあります。

この「放送受信料免除申請書」自体はそれほど難しい書式ではなく、申請者の住所、氏名、電話番号や障害者手帳の番号、テレビの台数を記入した上で、免除基準に該当する事由の欄のあてはまる項目にマル印を付けるだけです。

役所で奥書証明をしてもらったものをNHKに送付すると、ほどなく「放送受信料免除受理通知書」というハガキが自宅に郵送されてきますので、実際に免除になったかどうかがわかります。